第11回:停滞

こうして徐々に徐々に、自分自身のやる気も減少していった。それでも毎日、プロジェクトのページ(各自が成果物をアップしたり、連絡用の掲示板や日々のチャットがおいてある、パスワードで保護されたページが用意されていた)を見るくらいはしていた。
しかし、それすら億劫になるほど決定的にやる気がなくなったのは、冬コミでの製品版の頒布が絶望的になったころだろうか。
実のところ、この頃のことはよく覚えていない。ただ、いつの間にか冬コミは不可能だから、頒布時期を先に延ばそう、と決まっていたような気がする。
この、「とりあえず次に延ばす」というやり方は非常に危険である。延ばしても、次に完成できる、ということが確実ならば構わない。だが、先も見えない状態で延ばすと、だれてしまう。今まで「○○が締め切りだから頑張ろう」などと張っていたやる気が、弛緩してしまうのだ。
このあと陥りやすいのが、「次に間に合わなくてもまた延ばせる」と思ってしまうことである。一度楽できる、ということを知ってしまった人間は弱いものだ。
こうして、「今回も出来なくてもしょうがないや」などと思うようになってしまう。表面上はそうはならなくても、無意識にそのように行動するようになってしまう。延ばし癖が付いてしまう、とでも言ったらいいのだろうか。
これが進むと、締め切りをいつも守らず、連絡もせず、だから人からもその言動を信頼されず、という状況に陥るのだが……それは別の話だ。
一応4月頃にあるイベントが新たなる目標になった。が、これもまた曖昧なものである。本来ならば残作業量と各自の能力から、完成予定日を決めるべきなのだが、それもなされず単に次の大きなイベントが目標に設定されただけだったような気がする。
自分からすればこのような状況は混沌としたものであり、やる気を削がれるには十分な状況であった。
こうしてプロジェクトのページを見る頻度も徐々に減り、そして全く見なくなってからさらに2ヶ月ほどが過ぎた。