Memory

第19回:余録

何年か後、結局β2のまま、フリーソフトとして公開したことを聞いた。公開を始めてから数ヶ月後のことであったが。例え僕が作業した部分が世間一般から直接的に評価されない部分だとはしても、やはり関わったものが世に出るというのは嬉しいものだ。ネットを…

第18回:終焉

確か、夏のコミケに完成させる、と彼らは意気込んでいた。一応僕も、ブランクCDを購入してそれに備えていたが、結局そのCDは使われずじまいだった。 β2なるものが作られたのは秋か冬か。導入部とバッドエンドのヒロインの途中部分を書き直したものだ。追加…

第17回:流転

一息ついたところで、この後のことが話し合われた。もちろん、完成を目指すと言うことなのであるが、問題なのは目指し方である。他の参加者からは、キャラクタの追加やシナリオの追加などといった案が出たが、僕は、問題点の修正のみを行い、完成版をいった…

第16回:感想

大きくβ版と書いていたため、その点を問われたことも何度かあったが、無事に全部売り切ることができた。そのことをシナリオ書きの携帯に慣れない手つきでメールしたことを覚えている。 イベント終了後、いくつか感想をもらった。大抵は好意的なものであり、…

第15回:完成

サンクリを前にして一応動くものはできた。僕はこれをβ版と位置づけた。ゲームとしての全ての流れは完成しているし、一通り遊ぶことはできるが、画面演出やシナリオの調整が全く出来ておらず、誤字脱字のチェックも不完全だからである。とはいえ、イベントに…

第14回:佳境

作業は順調に進んだ。いや、無理矢理進めた、という方が正確か。会社は普通にあるので、こちらの作業が出来るのは家に帰ってからである。だいたい夜10時頃だろうか。寝るのは外が明るくなる朝5時頃だ。3時間ほど眠り、朝8時に起きて会社に行く……という…

第13回:戦場

この時点でそろっている素材は以下の通り。 シナリオテキスト7割 BGM8割 背景画5割 立ち絵5割 結構進んでいるように見えるかもしれない。後は足りないものを揃え、これらの素材を結びつければよいだけに見えるかもしれない。 しかし実際にこの2週間(最…

第12回:不覚

それは、サンクリの2週間前の金曜日のこと。夜、そろそろ寝ようか、という時に、ふとプロジェクトのページを覗いてみたくなった。とはいっても、完全に気まぐれである。あるいは、作業がまったく進んでいないことを確認したかったのかもしれない。一種の免…

第11回:停滞

こうして徐々に徐々に、自分自身のやる気も減少していった。それでも毎日、プロジェクトのページ(各自が成果物をアップしたり、連絡用の掲示板や日々のチャットがおいてある、パスワードで保護されたページが用意されていた)を見るくらいはしていた。 しか…

第10回:無駄

先日HDDの中を引っかき回したら、このテキストが出てきた。一部抜粋してみよう。 (ただし、固有名詞等は全て「――」に置き換えてある) ○おまけシナリオの定義 ――シナリオはおまけシナリオである。このため、以下の定義からはずれることは問題があると考える…

第9回:困惑

一つ苦々しい思い出がある。あるシナリオ書きのことだ。結果的にではあるが、僕が彼を追い出してしまったようなものだから。 11月頃だろうか。3人のヒロインのストーリーに関して、概要が決まってきた。二人はハッピーエンド、一人はバッドエンド。まぁ、…

第8回:減退

いつ頃からだろうか。ゲームを作るために人を集めた本人が、チャット等に姿を見せなくなっていた。一応連絡は取れる状態になっていたので話を聞くと、仕事が忙しい、という答えが返ってくる。 前兆もあった。あれは何のイベントだろう。体験版を売るというこ…

第7回:士気

何か制作を行う場合、一番重要なことは何だろう? 資金? 人材? 時間? 確かにこれらは重要ではあるが、なくてもなんとかなる。少ないならば少ないなりのものを作ればよいのだ。 しかし「やる気」がなくなるとどうだろう? やる気は創作活動におけるエネル…

第6回:体験

前にも書いたが、夏のコミケか何かに、体験版のようなものを作って出した。これは前出の打ち合わせで決まったことであり、「途中の時点で何か目に見える形になるものを作りたい」と自分が提案したことだ。 シナリオ的には最初の数日分だけで全体量の10%に…

第5回:目標

とはいえ、この会議が無意味なものに終わったか、というと決してそんなわけではなかった。やはり、文字だけのチャットでは意思の疎通に問題がある場面が多々ある。ゲームの設定を詰める、という点では、かなり有効だった。黒板に絵を描きながらのやり取りは…

第4回:天秤

一つのアプリケーションを作り上げるとき、重要な要素が3つある。性能、時間、品質である。アドベンチャーゲームであれば、CGやテキストの量、システムの機能といったゲームの「性能」、制作にかかる「時間」、バグがないことや使いやすさといった「品質」…

第3回:集結

集まった面子は10人程度はいただろうか。絵描きも文章書きもいた。一時期は、ムービー制作で有名な人もいたように思う。こういう雑多な人間が毎日夜になるとチャットに顔を出し、いろいろと話し合った。……いや、話し合った、とは言えないか。結局は雑談で…

第2回:『方針』

このプロジェクトについて書く前に、自分の行動方針について書いておこう。 「計画は悲観的に、行動は楽観的に」 とは誰の言葉だろうか。その出典は分からないが、とにかく自分が作業を行う時の方針は、この言葉に集約される。 計画を立てる時には、とにかく…

第1回:『開始』

これはただの思い出である。事実を元にはしているが、事実だと言うつもりはない。もう既に忘れていることもあるし、違えて覚えているところもあるはずだし。 内容は、同人ゲーム作成の過程……といったところか。いろいろなことがあった。最後に幸せな記憶を、…