第12回:不覚

それは、サンクリの2週間前の金曜日のこと。夜、そろそろ寝ようか、という時に、ふとプロジェクトのページを覗いてみたくなった。とはいっても、完全に気まぐれである。あるいは、作業がまったく進んでいないことを確認したかったのかもしれない。一種の免罪符である。「みんな作業していないのだから、自分も作業しなくても仕方がない」という。いずれにしろ、作業が進んでいることなど、全く思っていなかった。
だから、現状を見て僕は驚愕した。いや、情けない気持ちになったようにも覚えている。
みんなちゃんと各自の作業を行っていたのだ。多少遅れてはいたし、このままの勢いではサンクリに間に合わないかもしれないけれど、彼らは彼らの行うべきことを行っていたのだ。
僕は皆に詫びると、とりあえず作業にとりかかった。まずは現状の把握である。シナリオを読み全体像を把握するとともに、問題点や矛盾点をピックアップした。
シナリオは、想像以上にできのよいものであった。特に、バッドエンドとなるヒロインのシナリオは、当初考えていた以上に泣かせられるものに仕上がっていた。全部読み、最初に思ったことは、「これは完成させないともったいない」である。
そして考えた。今から僕が作業に入って、完成させることが出来るのか? 僕は、可能だと思った。理由は特にない。というよりも、意地やプライドの類である。これで期日までにやらなければ申し訳が立たない、と思ったのだ。
しかし問題が一つあった。翌週の週末、日曜日に僕が幹事の宴会が一つ設定されていたのだ。普通なら、作業を優先させるために宴会の幹事を他の誰かに任せ、自身は不参加とするところである。けれど僕はあえて、これに参加することにした。ただ参加するのではない、この宴会のある日曜日までに動作するものを完成させ、宴会の参加者に渡してテストしてもらおうと思ったのだ。
他の参加者は無理だと思っていたようだ。そもそも2週間で作ることさえ不可能だと思われるのに、1週間で動く形にするなど、奇跡だとまで言っていた。
そういう彼らを完成に向けて動かすためには、まず自分が動いてみせるしかない。
地獄の2週間が始まった。