第14回:佳境

作業は順調に進んだ。いや、無理矢理進めた、という方が正確か。会社は普通にあるので、こちらの作業が出来るのは家に帰ってからである。だいたい夜10時頃だろうか。寝るのは外が明るくなる朝5時頃だ。3時間ほど眠り、朝8時に起きて会社に行く……という日々を、1週間続けた。このツケは後で回ってくるのだが、それは別に書くとしよう。
他の参加者の作業も、一応順調に進んだ。いくつか困ったこともあったが。一例をあげると、エンディングでとある絵師の書いたキャラを並べて表示したら、別キャラなのに全く同じ姿勢(背の傾き方、首のかしげ方、腕の置き場所)になってしまってとても違和感のある仕上がりになってしまったりした。
もちろん、こういう点は適時連絡し、修正を依頼したが、なかなか修正してくれないこともあった。彼らのプライドの問題だったのだろうか?(どうも絵師の方々はプライドが異様に高い、というイメージがあるもので、そう思ってしまう)
それでも一応予定通り、日曜日には一通り動く状態になったものができた。もちろん、正常系のテストしかしていないが、シナリオ面の感想を聞くにはこれで十分である。
一応動くものが出来たからといって、月曜日から楽になるわけではない。テストを行い、誤字脱字のチェックを行い、適切なCGや音楽が使われているかチェックを行い、といった具合である。もちろん、日曜日に渡した人からのフィードバックを反映させることも重要だ。
開発はWindows2000上で行っていたので、Windows98で動かして問題がないか、というチェックもやった。非常に手間のかかる作業ではあったが、必要な作業と思っている。Windows9x系のOSは16bitコードが使われているためか、メモリ関係が非常にピーキーだ。NT系OSで動いても、9x系では異常終了する、というのはよく聞く話である。
そんなこんなで、睡眠時間は、一日3時間が4時間半に増えた程度であった。
そういえば、完成するかどうかまさに瀬戸際、という修羅場の最中に、どこでどう話を聞きつけたのか、このプロジェクトに飽きて投げ出したはずの主催者が、唐突にチャットに現れた。彼が何を言ったかはよく覚えていない。しかし彼は、誰からも相手をされないままいなくなり、その後二度と姿を見せることはなかった。
せめて、今まで放置していたことを詫びる、とか、今までプロジェクトを維持してきたメンバーに感謝の意を表す、とか、今、夜を徹して行われている作業の労苦をねぎらう、とかしていれば、また違ったことになっていたとは思うのだが。