第17回:流転

一息ついたところで、この後のことが話し合われた。もちろん、完成を目指すと言うことなのであるが、問題なのは目指し方である。他の参加者からは、キャラクタの追加やシナリオの追加などといった案が出たが、僕は、問題点の修正のみを行い、完成版をいったん作ることを主張した。
しかしある日、気がつくと登場人物が追加されていた。既に設定もCGも出来ている。シナリオもこれらを使う形で書き直し始めているという。さらに、追加のキャラを使った追加のシナリオ――原因解明編も考えているという。絵師の一人とシナリオ書きが、メッセンジャーで話し合い、決めたという話だった。
もちろん、僕はこの追加を行うのは反対だった。とりあえず、現在の登場人物だけを使った状態で、シナリオの完成度をあげ完成版を作る。キャラの追加はそれから行い、第2版としてやればいいのではないか。これが僕の考える方針であった。シナリオ書きの能力を見ても、もっと短いスパンで目標を定めた方がうまくいくと思った、というのもある。
しかし、僕の意見は無視された。あの状態からβ版が出来たことによって無駄な自信がついたのか。それとも、僕の意見はもはや聞くに能わなくなったのか。
一応前兆はあった。シナリオ修正を始めていたとき、この絵師が、自分の担当部分――バッドエンドとなるヒロインのシナリオの修正に異様にこだわったのだ。それに対して僕は、全体的なボリュームアップを主張したが、その意見は退けられた。結果的にその部分の修正はうまくはいったが、逆に他のヒロインのシナリオとの格差も広がってしまっていた。それを埋めたいという思いもあったのだが、彼らを説得することは出来なかった。
いつの間にかこのプロジェクトは、僕の手ではどうしようもない流れに転がり始めていた。