第18回:終焉

確か、夏のコミケに完成させる、と彼らは意気込んでいた。一応僕も、ブランクCDを購入してそれに備えていたが、結局そのCDは使われずじまいだった。
β2なるものが作られたのは秋か冬か。導入部とバッドエンドのヒロインの途中部分を書き直したものだ。追加されたキャラも顔だけ出している。
確かに、文章的な部分に関しての完成度は上がっている。しかし、全体で見た完成度はむしろ下がっているといえる。なにしろ、回収されていない伏線だけが追加されているのだから。それにヒロイン間の文章の完成度も開いたままであった。
それ以降、次のイベントで完成版を、と毎回締め切りが設定されるのだが、毎回直前になって「今回は出来ない」とシナリオ書きから泣きが入る。もはややるべきことが多すぎて、彼一人の手には負えなくなっていたのだ。僕の予想通りに。
手伝うことも出来なかった。修正案は全てシナリオ書きと絵師の頭の中にあり、明文化されていなかったからだ。プロットか、せめて粗筋の提出を求めたが、それも無視された。もしくは、その要求すら、今のシナリオ書きには負担が大きすぎることだったのか。それとも、ケチをつけられるのを恐れたのか。
いずれにしろ、もはや僕に出来ることは何もなかった。あるいは……僕は彼らから拒絶されていたのかもしれない。今思い返すと、そんな風にも考えられてしまう。システムはもう完成していた。もはやこれ以上僕がいて益になることはなかったのだろうから。
なんにしろ僕は居ても居なくても変わらない存在になっていた。これ以上とどまることに意味はない。
こうして僕はプロジェクトから離れた。