第10回:無駄
先日HDDの中を引っかき回したら、このテキストが出てきた。一部抜粋してみよう。
(ただし、固有名詞等は全て「――」に置き換えてある)
○おまけシナリオの定義
――シナリオはおまけシナリオである。このため、以下の定義からはずれることは問題があると考える。・本編の設定を遵守すること
特に――などの設定について、本編の設定を大きく逸脱してはならない。・本編のシナリオより重くならないこと
あくまでおまけであり、本編以上の重さを持たせては本編の印象が薄らいでしまう。特に本編がシリアス感動系であるならば。・プレイヤーは既に全シナリオをクリアしていることが前提
このため、本編のネタバレを使っても問題はない。
また、プレイヤーは全て知っていることを前提にシナリオを作成するべき。
○自分の考えるおまけシナリオの方向性
・萌え
露骨すぎない程度に、――としても無邪気さを全面に出すように。・――との関連性
すでに本編では
自分と――:――
他人とその――:――
他人とその――の結果:――
が描かれている。
これらとかぶることは避けたい。
そのため、
自分と――前に――
という状況をあげておきたい。
――シナリオと同一のようにも見えるが、こちらの話は――する前に――が変化することにより、――、という話である。もちろん――が変化する要因は、――である。
ただこれは、あまり表には出したくない。あくまで萌えの部分を正面に持ってきておきたい。
――について、極わずかにふれるだけでも、既に本編をクリアしてるプレイヤーなら、自分でどういう意味なのかとらえられるはずである。・本編キャラとの絡み
全面に出す必要はないが、本編をプレイした人へのサービスの意味も含めて、ヒロインキャラを登場させれればいいかと思う。
(ヒロインキャラ毎の詳細に付き略)・平和なエンディング
おまけシナリオでシリアスなエンディングにする必要性を感じないため。
おまけ、という感じで遊んでて、シリアスなエンディングはプレイヤーはへこむのではないかと。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○――シナリオプロット
テーマ等に関しては上記の通り起:出会い
(内容は略)承:日常の萌え生活
(内容は略)転:――の危機?
(内容は略)結:平和なエンディング
(内容は略)――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○各場面詳細
(場面毎の会話文を列記。内容は略)
このテキストを、このプロジェクトの参加者全員に送り、意見を求めた。ほぼ全員から同意を得られ、彼の作ったシナリオは没ということになり……そして彼はいなくなった。チャットに出てこなくなったのである。当時は彼のことを無責任なヤツだ、という風にも思っていたのだが、今考えれば彼の行動も当然かもしれない。自分の書いたものを全否定されたのだから。
この時の自分の行動が正しかったのかどうか。今でも判断できない。ゲーム自体の完成度(この場合はシナリオや設定の方面で)をあげるという意味では、彼のシナリオを却下することは正しかったと思っている。しかし、これは同人のゲームである。完成度よりもなによりも、各自が楽しめるものを作るようにするべきだったのではないか。
もっとも、彼の考えるところを早い段階から他の参加者に伝えるなりしておけば、防げたことでもある。あるいは、他の参加者を驚かせるために、一応粗筋という形ができるまで秘密にしておきたかったのであろうか。それとも、こうしてものを出してしまえば、却下されることはないと思って無茶をやったのであろうか。それともこれが彼の限界だったのだろうか。今となっては全てが謎である。
それにこんな想像など意味のないことだ。結局CGの方の工数不足により、おまけシナリオを搭載するという計画自体が没になってしまった。当然僕の書いたおまけシナリオ案も破棄された。結局僕がやったことは、全て、意味がなかったのだ。