伊豆高原ぶらり温泉一人旅―2日目

朝早くから起き出し、半露天貸し切り風呂に行ってみる。二つあるうち一つは同じ考えの人がいたか使用中。もう一つは空いていたのは運が良かったか。
入っては見るものの、展望露天ではないので何が変わるというわけではなく、周囲が少し明るくなっただけ。軽い失意とともに再就寝。
今度の起床は7時45分。8時から朝食である。昨日の夕飯とは別の、和室の食事処に通される。基本的に全員窓側の席で、外の景色を眺めながらの食事である。


こんな感じで、窓際で外を見ながら朝食を食べる

朝食。魚が2枚と豪勢に
外、とはいっても緑一色で景色に変化がおこるわけでもない……と思ったら、窓の外に猫が現れた。朝食の干物を見て、物欲しげに見ている。

魚を寄越せ、と訴える猫
宿の人の口振りから推測すると、居着いてしまっている野良猫のようだ。とても和む朝食であった。一欠片もあげなかったけど。

デザートのところてん。甘くなかった。残念

ふて寝したの、単に暖かいからか
朝食後も風呂に入り、軽くまどろむ。これで風呂には6回入ったことになる。正直、入りすぎのような気もするが、高い宿なのだから少しでも元を取らねば、という貧乏根性が働いてのことである。

昨日は気がつかなかったが、石像が建っていた
本当はこのままチェックアウトの11時までゴロゴロしているつもりだったが、周囲の部屋を掃除する音に罪悪感が芽生えてしまい、10時半頃にチェックアウトした。勘定は夕食時の飲み物込みで二万六千円強。値段分の満足感はあったが、値段以上の満足感はなかった。部屋もタバコ臭かったし(←まだ言うか)
さて、これからの予定だが、伊豆熱川を目指す。徒歩で。ちなみに電車なら10分の距離だが、9キロ位はあったりする。よい運動である。
最初の目的地は伊豆大川の磯の湯。波打ち際にあるという公衆露天風呂である。基本的にEzナビウォークの指示に従い国道135号を歩く。

いかにも国道沿いの食事どころ、な感じ

ここは、申し込むと自分で焼き物を作ったりもできたはず

その国道を挟んで反対側。伊豆急の高架が見える

なぜか巨大な石像が
最初はシャツの上に上着を着ていたが、すぐに脱いで鞄に押し込めた。今日は暑い。帽子を持ってこなかったことを後悔するくらいだ。特に国道沿いは日陰となるものがない。これは辛いか……と思っていると、途中から脇道にそれた。なるほど、こちらの方は山中の道にはなるけれど距離的には短く、また車通りも少ないし歩きやすい。なにより木が多く、時には頭の上までせり出すほどだ。歩くにはもってこいといえる。

国道から脇にそれ、少し上ったところ

適度に陰があって歩きやすい

更に上に行くと何かあったらしい。いかなかったけど

結構好きな構図。自然の中を歩いているという実感がある

赤沢温泉の付近だったと思う。この石碑だけが立派だったので

すぐ脇に階段が。上るとどこにいくのだろう?

伊豆急の高架を下から。歴史がある雰囲気
こうして歩いていると、また国道135号と合流するところまで来た。目の前に広がるのは海。感動的な風景なのかもしれないが、風が強くてそれどころではない。

赤沢の砂浜。さすがに泳いでいる人はいなかった
猛烈な風の中、国道を歩く。しかも伊豆高原付近と違い歩道がないので路肩を歩くのだが、これがまた怖い。風で揺れる体のすぐ脇を車やトラックが走っていくのだ。

目指すは熱川温泉

国道135号からの風景。あのホテルの風呂からはいい眺めなんだろうな

大川温泉に到着
恐ろしい1キロの道のりの末、ようやく磯の湯にたどり着いた。想像していたよりも遙かにこじんまりとした施設である。

一応漁協らしい。船しかないけど。このすぐ脇に露天風呂はあった

大川露天風呂磯の湯。まさに露天
見ると、営業日は土日、営業時間は12時から、となっている。今日は月曜日で今は11時50分。くたびれ損か? と思ったが、中には人がいる気配。やがておじいさんが出てきた。今準備中だ、ということで一安心。おそらく、ゴールデンウィークなので営業するのだろう。
さて、準備が出来たというので入ってみたが、いや、本当に簡素な脱衣所と風呂しかない。ロッカーもない上に、盗難があっても責任は負わないと書かれてる。最初は客が僕しかいなくて不安だと思ったが、むしろ客が僕だけで安心である。

露天風呂内部
というわけで安心して風呂に浸かる。ここも掛け流しで、そのままだと熱いので水で薄める方式のようだ。随分と潮の匂いが強い温泉である。まぁこれだけ海に近ければ当然かもしれない。ちなみに湯船は綺麗とはいえない。底には砂が残っている気がする。まぁ、今日は風が強かったからかもしれないが。
30分ほどで切り上げ、服を着ながら今後の予定を考える。お昼ご飯と、道である。特に道は重要だ。Ezナビウォークではずっと135号を行くように指示されているが、後3.5キロも怖い思いをするのはごめん被りたいところだ。ここは一つ、風呂屋のおじいさんに聞いてみることにしよう。客もいないことだし。
お昼ご飯の店については大した情報は得られなかったが、道に関しては重要な話を聞けた。旧国道がある、ということである。なるほど、観光案内の地図にもそれらしい道が書かれている。これによると、先ほど山の中を通ったわき道も旧国道の一部だったようだ。あの道をずっと歩けるならその方がよっぽどよい。「昔は学校に行くのに使ったんじゃ」というおじいさんの昔話に耳を傾け、お礼を言ってから歩を旧国道に向けた。……最後までその道標についてはよくわからなかったけど。松の木って……そんなどこにでもありそうなのを目標にされても。
と、最初のうちは思っていましたが。道のど真ん中に松らしい木が立っている。そして上の方に延びる道。なるほど、これか。ついでに道の脇には、食べ物屋の看板が。

お昼ご飯はここで食べようかねぇ
無国籍料理、らしい。日本食が続いているからここらで一つ、変わったものを食べるのも面白い。さらにこういうところでこの系統の店を出すような人間は、まだ年若いと思われる。旧国道に関してももっと詳細な話が聞けるかもしれない、よし、いってみるか。
急な坂道を登る。看板には50m先、と書かれていたが、200メートルも歩いたような気分の後に店に到着。ログハウス風の建物である。

とても景色のよい店でした。
店の中も、なんとも無国籍な感じだ。料理は色々アジアンなものが揃っている。インド料理とかタイ料理とか。せっかくなのでグリーンカレーをオーダー。結構辛かったが、同時に塩辛かったのが気になった。ナンプラーの入れすぎだろうか。まあ、大量に汗をかいた後なので、塩分の補給はありがたい。
食事の後、店長兼料理人兼オーナーと思わしき人に、旧国道について聞いてみると、確かにこの道の先が旧国道らしい。礼を言って店を出、さらに急な坂を登る。ちなみにこういう時にEzナビウォークはあまり役に立たない。こいつは最短距離となるルートを指し示し、特定の道を使うような設定が出来ないのだ。この場でルート検索すると、来た道を戻ってから国道を使うように指示される。まぁ、機械の限界であろう。ルート案内させずに、地図と現在位置だけ表示させておく。これだけでも今自分のいる道の行く先が分かる分、楽である。
坂を登りきったところで、少しだけ広めの道に出る。これが旧国道のようだ。山の中程を山に沿って通るこの道は、眺めがよく車通りも少ない。道の舗装もちゃんとされており、とても歩きやすい道である。景色を楽しみながら歩く。

旧国道を往く

ガードレール代わりにあるのは、背の低い車止めだけ

おそらく伊豆北川の町並み

疲れてきたので、展望公園は無視
唯一の難点は、Ezナビウォークがなかなか思い通りの経路を示してくれないこと。意地でも新国道を使おうとする。確かに新国道の方が山の下をトンネルで直進する分距離は短いのであるが、歩道のない道をウォーク用で優先表示するのは勘弁して欲しい。

突然進行方向に現れた、背の高い近代風の建物。ライオンズマンションらしい

目的地の熱川付近
こうして数キロ、ようやく今日宿泊する熱川プリンスホテルに到着した。時刻は2時。チェックイン時間より1時間も早いが、仕方ない。それから困ったことに左足の薬指が痛い。どうやらマメのようだ。まぁ、今日は結構歩いたので仕方がない。どうも自分は疲れが溜まると、足先の外側に体重をかけて歩く傾向があるようだ。その結果である。
チェックイン時間より1時間も早いのに、ホテルの対応はとてもよく、2時15分には部屋に通された。部屋はいわゆる温泉ホテルの和室で、10畳に縁側がついている。

部屋の写真。典型的なホテルの和室

床の間もあります

窓からの景色。一応、オーシャンビュー
すばらしいことに、全くタバコ臭くない。部屋には灰皿が備え付けられているので、禁煙部屋ということもない。後で話を聞いたところ、オゾンを使った機械で除臭しているらしい。その機械、個人的に欲しいものである。
風呂にも入れるというので早速入りに行く。案の定、他に客もなく貸し切り状態である。このホテルを選んだ理由として、風呂に関する評判がよかったから、というのがあったのだが、確かに悪くない。展望露天風呂と称して海の見える位置に風呂がある。他のホテルなども見えるし、湯船につかると海はみえなくなるが、まあこれくらいは仕方あるまい。この温泉を独り占めできるというのはすばらしいことだ。
ただ気になることが一つ。この露天風呂……特に海が一望できる桧風呂だが、どうみても他のホテルから見られる位置にある。というか、他のホテルの海側の窓が見えている。また、景色をよく見ようと身を乗り出すと、駅のホームが見える。ということは逆に下手に身を乗り出すと、ホームから見られる可能性があるということである。男風呂だからそういう雑な作りなのだろうか?
風呂から上がると3時。部屋に戻ると、仲居さんが挨拶に来た。こういう宿に泊まることはあまりないので、新鮮である。お茶とともにお菓子を出されたので食べてみたが、これが結構おいしい。会社向けに買って帰ることとする。
夕飯は18時から可能だというので、18時半からにしてもらう。これには理由があり、大多数の客は仲居さんにいわれるままに18時から夕食にするだろうから、その時間は風呂場が空くだろうという目論見があるからである。やはり風呂に入った後のビールはすばらしい。それはともかく、18時まで暇である。暇なのだが特に何をする気もなく、押し入れから枕を引っ張りだして横になる。畳の上に直に寝るのもなんだか心地よい。
こうして微睡んでいるうちに18時。案の定風呂は空いていた。屋外露天風呂はまたしても独占状態。予定通り物事が進むということは気持ちの良いことである。
18時半に風呂から部屋に戻ると、すでに夕飯がセットアップされていた。素早いことだ。

夕食。舟盛りは真鯛のお造り
まぁそれは良いのだが、焼き物や揚げ物まで並んでいる。手をかざしてみると、あまり暖かくない。手抜きであるが、これがこの価格帯の限界か。味自体はそれほど悪くなかっただけに、残念である。鯛の舟盛りも、最初は驚いたが単調な味が続くので最後の方は飽きていた。何でも善し悪しなのだなぁ、と思う。一番おいしかったのは、鍋物。だしの利いた汁がよかった。
ちなみに、夕飯中に写真を撮ったり今までの写真を見返していたら、初めてデジカメ等のバッテリー表示が二つになった(MAXは3)。この時点までで120枚くらいは撮っているが、個人的には十分すぎるもちである。明日もこのまま行けるかもしれないが、念のため充電しておく。
夕飯の後は、館内を回ってみる。ゲームコーナーがあるというので行ってみたが、なんとインベーダーが置いてあった。いったい何年物だろう。他はUFOキャッチャーの類ばかりで面白くなかったので、即座に退却。次いで土産物コーナーを見て回る。買うのは明日の朝だが、品ぞろえを確認しておく。
その後は縁側の椅子に座り、窓を開けて自然の音を聞いていた。風が木々を揺らす音が波の音のようにも聞こえ、とても心安らぐ。時々、他の客が騒ぐ声が聞こえてくるが。ああ、無粋だ。
今日はさっさと寝ようと、9時頃から風呂に入りに行く。……人がたくさんいる。まぁこのホテルの収容客数は300人くらいはあり、今日はゴールデンウィーク期間だけあって人がたくさんいるから、これくらいいても不思議ではない。人がたくさんいるのはいいが、子供が騒いでいるのは勘弁だ。兄妹で脱衣所で濡れたタオルを投げ合ったりとか奇声を上げたりとか。小学校には入ってるくらいの年頃だとは思うが、まったくしつけはどうなっていることやら、と思ってしまう。とりあえず体を温めるだけで、早々に退散する。
寝よう、と思うとなかなか寝付けない。まあ普段の就寝時間に比べると早すぎるからだが。しかたがないので、W-ZERO3を取り出して日記などを書く始める。こういう時に手軽にかけるのはとてもありがたいものだ。先ほどと同じく縁側のいすに座り、文を練る。
それにしても人の声が延々と聞こえる。時々、叫び声のようなものも聞こえる。どこか窓を開けて騒いでいるのか、と思っていたが、ホテルの構造を見直すと理由が分かった。自分の部屋は、女性用露天風呂の上に位置するのだ。なるほど、女三人寄れば姦(かしま)しいとはこのことか。
1日目の部分を書いたところで午前0時近くなっていた。ちょうど眠くもなったので、消灯・就寝。明日の朝は普通に起きることにしよう。どうやら明日の朝は曇りらしく、日の出関係は期待薄なので。